【<競馬>クラシック物語2020年】強烈な2歳G1馬2頭による2度のマッチレース

 朝日杯がG1になった以来、朝日杯に優勝した馬が、初めて最優秀2歳牡馬を獲得できなかった年になった。朝日杯を盤石の競馬でほかの馬たちを子ども扱いして圧勝したサリオスからその賞をかっさらったのは、コントレイル。東京スポーツ杯を5馬身差ちぎって勝ち、ホープフルSも楽勝し、サリオスと同じく3戦3勝で2歳G1になった馬だ。最優秀2歳牡馬は、接戦と思いきや思わぬ大差でコントレイルに軍配があがった。

 昨年度からのトライアル崩壊の流れも顕著に出ており、コントレイル、サリオス共に、3歳戦は、皐月賞に直行することになった。ケガさえなければ、無敗の2歳馬同士が対決する皐月賞になる。相当盛り上がる中山競馬場が想像された。

 この2頭を脅かす馬と考えられていたのは、マイラプソディ。武豊鞍上で、3連勝で京都2歳Sを制した馬だ。暮れのG1はスキップして、共同通信杯を選択。1.5倍に押された。しかし、後方からレースを進め離された4着。一転評価は急落してしまった。

 2頭の王者がいない皐月賞トライアル。2歳時にコントレイルに苦杯をなめた2着馬ヴェルトライゼンテ、3着馬ワーケアよりも目立った馬が2頭いた。サトノフラッグとアドマイヤビルゴである。

 サトノフラッグは、弥生賞ディープ記念を父ディープインパクト譲りの4コーナーまくりでの抜け出しレースで完勝。本格化が見えたレースだった。アドマイヤビルゴは、セレクトセール6億円馬。高額馬は走らないという定評を覆し、新馬をギリギリのレースで勝ち上がったばかりであるが、若葉Sは急成長を見せつけ、軽々と皐月賞の権利を得た。

 

 本番の皐月賞、アドマイヤビルゴは、ダービー狙いで、京都新聞杯に回ったことから、世間は、無事に参戦を迎えられた2歳王者2頭に、サトノフラッグを加えた3強でもちきりだったが、誰もが想像もできなかった緊急事態宣言による無観客の競馬。静かな中山競馬場での戦いになった。しかし、ファンとしては、他のスポーツが軒並み中止延期になるなか、無事に迎えられたことを非常に喜んだ。

 レースは、競馬ファンが、競馬場に行けなかったことを悔しむような好レース。2歳王者2頭のマッチレースになった。サリオスは、先行4番手くらいを進み、最終4コーナーから馬郡をこじ開け力強く早め先頭。コントレイルは、1枠がたたり、抜け出しづらいインコースを走っていたが、4コーナーではいつのまにか大外に回り、弥生賞のようなレースで勝負をしたサトノフラッグをまくる。

 サリオスが抜け出したところで、コントレイルがそれを捕まえにいき、後ろを突き放しながら、一騎打ち状態。100mくらい並走をしたが、コントレイルが執念でサリオスを抑えきり半馬身差で栄冠。この2頭から後ろは3馬身以上離れていた。サトノフラッグは末脚不発で5着。人気としては、1番人気コントレイルと3番人気サリオスの間に割って入った2番人気だっただけに残念な結果だった。

 2歳G1馬のマッチレース、暮れのジャパンカップ前までは、今年のベストレースといっても過言ではないレースだった。

 

 ダービーへの前哨戦としての注目は、アドマイヤビルゴ。この強烈な2頭に勝てるとしたら、この馬くらいでは?という期待をされての京都新聞杯への出走。当日も単勝1.4倍と圧倒的支持を受けたが、まさかの4着敗退。若葉Sのような軽やかな伸びが全くでなかった。2勝しかしていないため、ダービーのチケットも取れずで終わってしまった。

 

 こうなるとダービーは、皐月上位2頭の再戦だけに注目が集まる。ただ、サリオス自体は、長距離型ではないと2歳時から言われおり、またコントレイルは圧勝の東京スポーツ杯と同じ東京競馬場ということもあり、コントレイル1.4倍と断然1番人気。サリオスは離れた4.4倍での2番人気。3番人気のワーケアは、12倍を超えていた。

 レースは、皐月賞と両者戦略が真逆になった形。コントレイルが前、サリオスが後ろ。コントレイルが先に抜け出し他馬を突き放しにかかるところに、サリオスが後ろから襲い掛かる。サリオス陣営がコントレイルを逆転するために仕掛けた作戦だろうか。

 ただ、ここからは皐月賞とは違った。コントレイルが抜け出したところで、サリオスが近づき、マッチレースを仕掛ける。ただ、その差が縮まらない。並走に持ち込めない。一度差が縮まった2頭の差が広がっていく。突き放す。コントレイルの圧勝になった。父ディープインパクト以来の無敗の2冠馬の誕生だ。前週は、牝馬では、デアリングタクトが無敗の牝馬2冠を手にしており、2週連続での無敗の2冠馬が生まれた。

 サリオスもコントレイルには3馬身置いて行かれたが、3着とは2馬身ほど2着。皐月、ダービーともに2着は、約20年振り。特に、両レースとも同じ馬に敗れた2着は、もっと前になる。たらればはいけないが、圧倒的な存在のコントレイルが不在ならば、サリオスが無敗の2冠馬になって歴史に名を刻んでいたのかもしれない。

 

 秋以降、コントレイルは、神戸新聞杯ステップとして選び圧勝。そして断然1番人気で菊花賞へ。伏兵に思わぬ苦戦をするが何とか勝ち切り、見事史上3頭目の無敗の三冠馬に輝く。無事史上初の牝馬3冠馬となったデアリングタクトも加えた伝説のジャパンカップでは、現役最強牝馬に屈して初めて2着となるが、後方からごぼう抜きの強いレースを見せつけた。短距離・中距離路線に舵をきったサリオスも、毎日王冠にて古馬を一蹴し、この世代の強さを確実に示していった。