【<競馬>クラシック物語1997年】人気のメジロブライト、実力のサニーブライアン?

 朝日杯3歳S(現在の朝日杯フィーチュリティーS1番人気は、ノーザンテースト最後の大物と呼ばれたクリスザブレイブ。だが、ブービーの15着に沈み、上がり38秒の競馬でマイネルマックスが勝った。GIII,GIIGIと重賞3連勝となったが、すべて1番人気では無く、実力が評価されない馬であった。そこで現れた新星は、オグリキャップ伝説の復活の有馬記念2着だったメジロライアン初年度産駒のメジロブライトである。新馬戦は6頭立て6番人気、1800mのレースを2分以上のタイムで勝ち上がり、デイリー杯で外国産馬シーキングザパールの圧勝劇の後方で、レース最速の上がりを記録した馬であった。地味な感じであったが、ラジオたんぱ杯で杯見事インから差し切り、一躍クラシック候補となった。また、地味であるが注目されたのこちらも一緒。ランニングフリー産駒のランニングゲイル。朝日杯は不利があって届かずの4着だったが、このマイナーな血統で強いところが人気になった。武豊からも、「ランニングフリー種牡馬になっていたんだ」というコメントもあった。

 

年が明けて、目立っていたのは、外国産馬。この時期ではまだクラシックは解放されていないが、シーキングザパールを筆頭とした外国産馬の当たり年で、重賞は外国産馬に結構取られる。そんな中、目立ったのはやはりメジロブライト共同通信杯で、直線一気。ナリタブライアンのレコードと同タイムで制す。

他の有力馬としては、ゆくゆく伝説となるサイレンススズカ弥生賞前の新馬戦を7馬身差で圧勝。本年クロップ3年目で質が下がったといわれていたサンデーサイレンスの大物として注目を集め、弥生賞2番人気。しかし未熟さを露呈し、ゲートをくぐる動作をし、外枠発走。そして大幅な出遅れで、7着に沈む。勝ったのは、地味血統のランニングゲイル。2着オースミサンデーに3馬身差をつけた。スプリングSは、マイネルマックスの回避によりブライトに人気集中するが、当日の雨のせいで、ビックサンデーの後塵を踏む。若葉Sシルクライトニングが勝ち上がり。

 

戦前は混戦とみられた皐月賞だが、ふたを開けてみればブライトの一点かぶり。人気でこの馬を上回る馬は、この春いなかった。レースは若葉S 3着のサニーブライアンの大逃げ、ブライト・ゲイルは中団から後方待機。直線で両馬共に伸びるが先頭には届かない。サニーは直線半ばに一杯となり半馬身差までシルクライトニングに追い込まれるが、まんまと逃げ切った。大荒れの皐月賞馬連5万で幕を閉じた。

サニーブライアンは、年明けのジュニアカップを快勝していたが、その後の成績を見れば、大舞台で一発あるとはほとんど想像ができなかった。ただ、そのような周りのイメージを逆に利用し、見事な逃げ切り勝ちを演じたのであった。

ダービートライヤルのプリンシパルSには、あのサイレンススズカ皐月賞6着に沈んだランニングゲイルが出走した。徐々に成長したサイレンススズカが、マチカネフクキタルランニングゲイルの追撃を押さえ、ダービーへ駒を進めた。裏番組の京都4歳Sを勝ち上がったのは、今年絶好調のブライアンズタイム産駒のシルクジャスティス。直線一気の魅力でダービー3番人気になる。

NHKマイルはこの頃、〇外ダービーとも呼ばれ、ダービーへのステップレースという印象ではなかった。今年も、外国産馬シーキングザパール内国産馬を寄せ付けない強さで優勝。ダービーの有力馬は出てこなかった。ちなみに、皐月賞の翌週に新馬勝ちをした外国産馬タイキシャトルという歴史的名馬がしれっとデビューしたのはこの時期だったが、単なる1レースとして流されていた。

 

改めてだが、今年はブライアンズタイム産駒が大活躍である。皐月賞には5頭送り出し、最終的にはブライアンズタイムシルクライトニングのワンツーを決めた。ダービーはマチカネフクキタルジャスティスの参戦でなんと7頭となった。前年までのサンデーサイレンスの独壇場であったが、今年はブライアンズタイム一色となり、この年が絶頂であったと思われる。迎え撃つのは、負けても強い印象付けた1番人気メジロブライト皐月賞馬は、長い直線の東京競馬場ではと考えられ、6番人気に甘んじていた。レースはサイレンススズカ皐月賞馬に先頭をゆずり、逃げモードに入る。そして皐月賞同様に4コーナースパート。直線に入り他馬が押し寄せる。その更に外を人気のブライトとジャスティスが飛んでくる。しかしサニーの前評判を覆す脚色。東京競馬場の長い直線でも、まったく止まる気配無し。とうとう強さで有力馬を退け、あれよあれよと2冠達成。皐月賞はフロックではないことを証明した。ジャスティスが2着。人気のブライトはまたも連をはずして3着。終わってみれば、またもやブライアンズタイムのワンツー。産駒の層の厚さが目立った。

東京競馬場には、3年前の三冠馬と同じ父である当馬へ3冠コールが巻き起こる。3冠馬をみることが競馬ファンの1つの楽しみでもある。だが、レース中に骨折をしていたことが判明し、秋を棒に振るどころか、残念ながら2度とターフに戻ってくることはなかった。本当に強かったのだろうかということを思われながら。

 

秋の主役は、京都大賞典を制したジャスティス、神戸・京都新聞杯を制したマチカネフクキタル、そして春の主役メジロブライト菊花賞はこの3頭が人気となったが、結果制したのはマチカネフクキタル。1番人気ジャスティスは5着、ブライトはまたもや3着に終わった。その後ジャスティスは有馬記念を制して、この世代が強いことを証明し、ブライトも史上最強と呼ばれる翌年の世代に、唯一食らいつく活躍を見せた。