【<競馬>クラシック物語2010年】新馬戦で相まみえた2頭+前哨戦圧勝メンバー 勝ったのは?

20091025日、両馬は同一の新馬戦で相まみえた。ローズキングダムヴィクトワールピサ。この年代で中心となる2頭である。長い競馬の歴史でも、“伝説の新馬戦“ランキングで三本の指に入ってくるレースとなった。勝ったのは、ローズキングダム。中盤まではヴィクトワールの後ろにいたが、先に直線抜け出し、最後まで抜かせなかった。

ローズキングダムは、その後、東京スポーツ杯経由で朝日杯へ。3連勝で2歳チャンピオンの称号を獲得となる。ヴィクトワールも未勝利からラジオNIKKEI杯まで3連勝で2歳戦を締めくくった。ローズキングダムは、スプリングS、ヴィクトワールは弥生賞から皐月となり、その再戦が待ち遠しい冬となった。

 

春になり最初の登場は、ヴィクトワール。相手は、エイシンアポロン。朝日杯でローズキングダム2着になって、今回はこちらにぶつけてきた。ローズキングダムとの物差しにはもってこいの馬ではある。レースは内々で進めたヴィクトワールは、4コーナーから抜け出す場所がなく、直線完全に前が詰まる。アポロンは軽快に抜け出し、快勝かと思われたが、一度ブレーキ気味になったヴィクトワールが残り100mで急加速、一気にアポロンを抜き去ったところがゴール。強さを感じるレースとなった。続いての登場はキングダム。当然勝つだろうと思われ単勝1.4倍。ただ、レースは、アリゼオの巧みな逃げに屈し、またゲシュタルトにも届かず、初の黒星となる3着。2強の明暗が分かれた。

 

皐月賞は、弥生賞の圧巻のレースから、ヴィクトワールが抜けた1番人気。ローズキングダムは2番人気で、スプリングSでまけたアリゼオやヴィクトワールと接戦をしたアポロンと近い倍率となり、トライアル1戦だけで2強から、ヴィクトワール1強へ世間の見方は変わってきた。レースはその前評判通りとなり、ヴィクトワールが、中盤からインコースをするする抜けて、最後は唯是とゴール版を先頭で駆け抜けていった。ローズキングダムも直線追い込んできたが、逆に、ヒルノダムールエイシンフラッシュなどの後方の馬に差し切られ、完全に王者交代となる4着に沈んだ。

 

例年であれば、皐月賞上位馬がダービーでも人気となり、ダービートライアルは面白い馬が出てきて1頭くらいというものだが、今年は違った。

まずは、青葉賞。若葉Sを勝ち皐月賞のチケットを手に入れながらダービーに照準を絞ったペルーサが、豪脚を見せ、青葉賞から初のダービー制覇を期待させる4馬身差の快勝。プリンシパルSでは、あのエアグルーヴの子のルーラーシップがこれまた4馬身差圧勝。最後に、NHKマイルCでは、毎日杯ルーラーシップに楽勝したダノンシャンティが参戦。後方3番手から15頭をごぼう抜きして、3歳レコードでG1制覇。3頭とも圧倒的な人気で圧倒的なレースを見せた。京都新聞杯でもスプリングSローズキングダムに先着したゲシュタルトが重賞初制覇しており、「ダービーはすごいメンバーになるぞ」と近年まれになく騒がれた。

 

待望のダービーウィーク。王者ヴィクトワールをはじめとする皐月賞上位組VS前哨戦圧勝メンバーで直前まで盛り上がったが、逆転筆頭候補のダノンシャンティが無念の出走取消。ヴィクトワール1番人気、青葉賞から初のダービー制覇を期待させるペルーサが僅差の2番人気となった。そこから離れた人気で、皐月賞最速の足を使った皐月2着のヒルノダムール3番人気、ルーラーシップを挟んで、皐月4着のローズキングダム5番人気だった。

超豪華メンバーとなったダービーがスタート。ヴィクトワールはいつもの中団からのレースでインコースから抜け出しを図る。だが、直線、いつものような一気には伸びてこない。その隙に、外から復権を狙うキングダムが一気に先頭へ。3歳になってからの2戦は見せ場を作れなかったが、この日は力強い。ただ、ローズキングダムの夢を打ち砕いたのが、皐月賞3着にもかかわらず7番人気に甘んじたエイシンフラッシュ。ヴィクトワールとローズキングダムの真ん中を残り100mで一気に突き抜け、最後まで抜かせず、ダービー馬に輝いた。上り3F32.7秒。皐月賞を3か月の休養明けにもかかわらず3着に入った実力は本物だった。ヴィクトワールは、反応が悪かったのではなく、さらに切れる馬がいたということだった。

ダービーを最大限に盛り上げた前哨戦メンバーは、前々で競馬をしたゲシュタルトルーラーシップ4着、5着。2番人気のペルーサは、先行勢もさせず6着どまり。皆、盛り上げには十分貢献したが、皐月賞組を逆転することはできず、やはり「皐月賞組強し」ということを再度印象付けるレースとなった。

 

 秋以降、この同じ新馬戦で出会った2頭は、それぞれ大活躍を見せる。ローズキングダムは、神戸新聞杯エイシンフラッシュを倒し、菊花賞は堂々1番人気。レースでは、その神戸新聞杯3着のビッグウィークに栄冠をかっさわれるが、続くジャパンカップでは1位入線馬に直線邪魔され繰り上がりという形になってしまったが、ヴィクトワールも退け、2個目のG1を手にした。ヴィクトワールはそのジャパンカップの前に、果敢に凱旋門賞へ挑戦。良い結果は出なかったが、その経験からか一回り成長しており、年末の有馬記念を制し、更に翌年、日本馬で初のドバイワールドカップを制覇することとなった。