【<競馬>クラシック物語2001年】黒船襲来、ラジオたんぱ三強

 

 

 21世紀の最初のダービー馬を決める2001年。この年は、歴史的にもクラシックロードが大きな変革した年であった。これまでダービー(東京優駿)は、内国産馬のみ出走できたが、この年より、外国産馬にも門戸が開かれたのだ。その開放元年に名づけられた、その名もクロフネがクラシックロードを大いに賑やかすことになった。

 

そのクロフネ、デビュー戦はクビ差の2着に敗れたものの、その後の未勝利戦、エリカ賞と2歳レコードを2戦連続で叩き出し、一気に頭角を現していた。朝日杯で優勝したメジロベイリーは未勝利勝ちからの優勝でフロック視され、その朝日杯で一番強い競馬をした2着馬タガノテイオーがレース中の骨折で予後不良となってしまったため、クロフネが駒を進めたラジオたんぱ杯に、大きな注目が集められることになった。

クロフネ単勝オッズは1.4倍。前述のタガノテイオーに2度黒星をつけたジャングルポケット、前年のダービー馬全弟のアグネスタキオンも参戦していたが、圧倒的な人気になっていた。レースは、最終コーナーから早くも先頭に踊り出そうなクロフネの勢いから、直線突き放すイメージさえ沸いたが、直線を向くとその直後に控えていたアグネスタキオンが、クロフネに並ぶ間もなく、一気に抜き去り突き抜けた。クロフネはゴールまで差を縮めることも出来ず、更には、後方にいたジャングルポケットにも差され、3着。先頭アグネスタキオンは、最後押さえる手ごたえで、完勝。デビュー2戦目ながら大物っぷりをみせつけた。

このレース後、アグネスタキオンを管理する長浜調教師が「三冠を狙える馬」と断言したことで、一気に注目が集まるようになった。

 

年があけても、ラジオたんぱ組が目立っていた。まずは、ラジオたんぱ前に休みを入れていたジャングルポケットは、そのまま共同通信杯に向かい、豪快な差しきり勝ちを決めた。休みをはさみ毎日杯に進んだクロフネも、2着馬に5馬身、3着馬に10馬身の差をつけ快勝。タキオンは王道の弥生賞を選択。周囲も恐れをなしたか、トライアルでは珍しい8頭立て。レース当日は、不良馬場という条件だけ心配されたものの、杞憂に終わる5馬身差快勝。本当に3冠かもというムードが更に高まった。

 

ただ、もう1頭、皐月賞を前にして、同じアグネスの名を持つ馬にも新たな注目馬が出てきた。3戦目のきさらぎ賞まで33勝で来ているアグネスゴールドだ。トライアルのスプリングSにも断然人気で出走し、過去レース同様、強烈な差し足で見事4連勝を達成。鞍上はタキオンと同じ河内洋スプリングSの快勝後は、河内がタキオンとゴールドのどちらをえらぶかさえ騒がれるほど注目を浴びたが、残念ながらアグネスゴールドは本番前に骨折に見舞われ、春のクラシックには出走できなくなってしまった。

 

 皐月賞は、まだ外国産馬に開放されてないためクロフネは未出走、3歳王者メジロベイリーも故障で春全休という状況から、タキオン単勝1.3番の断然人気に押されることになった。2番人気がジャングルポケット。レースは、ジャングルポケットの大きな出遅れから始まり、タキオンは必勝法である中盤から4コーナーで一気に加速しそのまま突き放すという形をとった。直線に入り早くもタキオン先頭。アーリントンCを制すも離れた3番人気だったダンツフレーム、出遅れたジャングルポケットが必死に追いすがるも、差は縮まらず、そのまま力強くゴールまで突き抜けた。強い印象を残し、三冠宣言の1つめのハードルをたやすくクリアした。レース後の河内から「タキオンの本気はこんなものじゃない」という頼もしい発言がでたほどであった。

 ただ、その河内の言葉が本当だったらしく、大きなニュースが入ってきた。「アグネスタキオン屈腱炎!」皐月賞の際、帰し馬を嫌がるなどの様子を見せていたこともあり、既に馬自身で違和感をもっていたのであろう。

 三冠確定まで言われていた馬の脱落により、開放元年のクロフネに再度注目が高まる。毎日杯後は、NHKマイルCに進み、それを快勝。出走条件をクリアし、晴れて外国産馬で初めてのダービーキップを勝ち取った。

 

 ダービーは、トライアルから有力と思われる馬が出てこず、ジャングルポケット1番人気、クロフネ2番人気、皐月賞2着のダンツフレーム3番人気になった。ジャングルポケット皐月賞で大きな出遅れからも3着まで来たことと、クロフネ1600mからの参戦ということで、この人気の順になったのであろうか。それともラジオたんぱの順位こそと思う人が多かったのか。

レースは、皐月賞のような出遅れもしなかったジャングルポケットが強烈な脚で、クロフネなどの先行馬をまとめて差し切り、21世紀最初のダービー馬になった。ダンツフレーム皐月賞同様追い上げを見せたが、ジャングルポケットを上回る脚は使えず、連続の2着になった。クロフネは、今までの圧巻のレースを見せていた姿は見られず、直線もがき、5着に沈み、ラジオたんぱの雪辱はならず。クロフネの敗北により、外国産馬でのダービー制覇は長くお預けとなる。

 

アグネスタキオン菊花賞前に引退を発表し、菊花賞ジャングルポケットダンツフレームも揃って参戦したが、夏の上り馬マンハッタンカフェが栄冠。勢いそのままに有馬記念まで制した。アグネスタキオン弥生賞1.1秒離された4着馬だった。

またジャングルポケットは、菊花賞ジャパンカップに出走し優勝。初のダービーとJCを同一年度獲得する馬となった。クロフネは、ダート路線に移り、ジャパンカップダートで旋律のレコード優勝。3歳馬が古馬を圧倒する秋となった。